金縛りに関する記憶がある。
数年前に住んでいた家が見事に化け物屋敷だった。
それで、金縛りがかなり頻繁にあった。
主に金縛りにあうと、女性がお腹の上に乗っているか、壁から手が何本も伸びてきて、撫でたりするというようなものだった。
しかし、その日は違った。
とにかく金縛りにあった僕は、一瞬でも早く眠りにつくために足をバタつかせた。
夏なのに冷たい(寒さとは違った感じ)部屋。
このままでは、また困窮してしまう。
焦ってきた僕をあざ笑うかのように窓がカチッと開いた。
そしてゆっくり開く窓ガラス。
入ってきたのは知らないおじさんだった。
初めて見るキャラクターの登場に緊張する僕。
しかし、体は指の1つも動くことができない。
何とか視線を必死に動かしておじさんを観察した。
体格が大きい。
髪はぼうぼうの髪、キューティクルは全くない。
目つきは、何かおかしい。
印象としては、肉体派ホームレス。
何とかそこまで判断した時、おじさんがこちらに近づいてきた。
どんな怖いことに遭うのか不安になる僕。
獲物を確認しようと、近づいてきたおじさんの手を凝視した。
錆びて曲がったのこぎり…鍵を開ける道具。
おじさんは幽霊ではなく強盗だった。
その時ほど気絶したいと思ったことはなかった。
友人が連れてきた猫がいなかったら、本当に死んだまま発見されたはずだ。