2014年8月、PlayStation Network上で一本の無料ゲームが配信されました。そのタイトルは『P.T.』。後にそれはコナミの人気ホラーゲームのティーザー広告として配信されたことが判明しますが、その後、『P.T.』とは数奇な運命をたどることになります。
■『P.T.』はどんなゲームだったか?
配信当初、『P.T.』は“7780s Studio”という、謎の開発チームが作ったタイトルであるとされました。内容は一人称視点を採用したホラーゲームで、移動できるのはある屋敷の廊下と、それに面したバスルームのみというシンプルなものでした。
しかし、そのシンプルさが逆に恐怖感を煽ることで『P.T.』はネットを中心に大きな話題になりました。フォトリアルに作られた映像の不気味さや突然起こる超常的現象の恐怖、ほとんどヒントらしいヒントもなく、クリア条件が分からないことから生じる焦燥感はすさまじく、多くのプレイヤーが『最も怖いホラーゲーム』と称したとも言われます。
やがて、ゲームをクリアした人物が現れ、『P.T.』の正体が判明します。
クリア後に流れるムービーには、『メタルギアシリーズ』で有名な小島秀夫監督や、映画『パシフィックリム』のギレルモ・デル・トロ監督らの名前がクレジットされ、その最後に画面上に現れたのは『SILENT HILLS』の文字……、そう、これはコナミの人気ホラーゲームシリーズ『サイレントヒル』の最新作を予告する、プレイアブル・ティーザー(playable teaser)だったのです。
多くのホラーゲーマーの支持を集めた『P.T.』、本編『サイレントヒルズ』への期待も高まっていきましたが、その後、思わぬ展開が待っていました。
■『SILENT HILLS』制作中止発表、しかし……。
2015年4月28日、コナミは『SILENT HILLS』の制作中止を正式に発表、『P.T.』も4月29日を持って配信が停止されました。
この発表に多くのファンが落胆、ネットではコナミに対する批判や抗議の声があがりました。また、アメリカのネットオークションに、配信停止された『P.T.』をインストールしたプレイステーション4が出品され、高値で落札したという現象も起こりました。
結局本編が制作されないままに終わった『P.T.』でしたが、その影響を受けた多くの映像作品やゲームがネットにアップされました。
イギリスのデベロッパーLilithは『P.T.』の影響受けたとされるホラーゲーム『Allison Road』の製作と2016年に製品版をリリースする予定であることを発表しました。
デモプレイでは、リアルなビジュアルと閉塞感を感じる室内を探索するプレイの様子が確認でき、確かに『P.T.』の影響を受けていることが確認できます。
カナダのゲーム開発者Farhan Qureshi氏が製作した『PuniTy』は、『P.T.』そのものを再現したゲームで、なかなかの再現度を誇っています。
他にも『P.T.』を独自に再現した映像はいくつもYouTubeにアップされており、中には人気ゲーム『Minecraft』を使って再現したというユニークなものも。
『P.T.』は本編が製作されず終わったにも関わらず、多くの後継作を生み出していく伝説のホラーゲームになったと言えるかもしれません。