1995年、一風変わったシミュレーションゲームがアートディンクから発売されました。
潜水艦に乗ってどこかの海底を探索する『アクアノートの休日』は、ジャンルこそシミュレーションとなっていますが、明確なクリア目的がなく、プレイヤーの好きなように楽しめるゲームでした。
■『アクアノートの休日』とは潜水夫の休日という意味です。
PlayStation用として開発されたこのゲームは、3Dグラフィックが主流になってきた頃に様々な工夫を凝らした物の一つとして話題となりました。リアルな海中を再現し、その中を自由に探索できるというものは本作が初めてで、その後にも同様の海底探索ゲームは出ていません。それだけに非常に貴重なジャンルのゲームとなっています。
シリーズ4作目 AQUANAUT'S HOLIDAY ~隠された記録~
2008年に発売された4作目になって初めてメインストーリーが導入されましたが、基本コンセプトは従来通り、プレイヤーが自由に海底探索を楽しむことを目的に作られています。
もちろん探索せずに海の中を映し出す環境ビデオとして視聴するのもありです。運が良ければ貴重な魚が画面に映ることもありますよ。
■リアルな魚達の姿に癒やされるゲームです。
『アクアノートの休日』は海中探索ですので海洋生物が多数登場します。その数300~400種類。
食用としてお馴染みの小魚からシャチやサメ、エイといった大型の魚、そしてイルカやクジラなどの海洋哺乳類までが登場し、画面の内外問わず自由に泳ぎまわってくれます。
その造形は非常にリアルにできていて、その姿だけで何の魚かがわかるほど作りこまれています。よくありがちな適当な魚の姿に名前を付けた、同じモデルを複数の魚で使って名前だけ替えている、そういう手段は一切使われていません。
発見(捕まえることはできません)した魚は登録される仕組みになっていて、図鑑としての価値も持っています。
また非常に珍しい深海魚がでることもあって、深海好きの人にも好まれていました。
特に当時から生態がわからない「メガマウス」というサメを登場させていたのは驚異的なことで、日本では死体でしか発見されていなかったのですが、あらゆる資料を参考にして泳いでいる姿を再現させたということです。その執念には本当に頭が下がる思いです。
これら多数の魚、3Dグラフィック能力が今ほど高くないPlayStationでも、それらが泳ぎまわる姿は圧倒されますし、見ているだけでも十分癒されるゲームでした。
4作目で対応機種が変わり、グラフィック能力が大幅に引き上げられたことでさらにリアルな画像となったのですが、逆にリアルすぎて深海部分やクジラの威圧感に怖くなる人も出てしまったほどです。
それほど素晴らしいゲームだったのですが、探索・鑑賞向きのゲーム内容のためプレイヤーを選ぶという欠点が災いし、残念ながら4作目でシリーズ終了となってしまいました。
■海底探索はVR用として最高の素材
最近はストレス解消にやっているはずのゲームでストレスが溜まる、やると余計に疲れるというゲームが多いのですが、このアクアノートの休日は魚をゆっくり眺めるゲームですので、気分転換としては最高のゲームです。
また、水中探索という現実で行うには非常に難しいことをやれるので、VR(バーチャルリアリティ)でやれば没入感と相まって非常に効果的なゲームになりうると言えます。
このゲームの1作目を手がけた飯田和敏氏は現在インディーズゲームで活躍されておられます。そしてインディーズゲーム界はVRに大きな関心を寄せており、数々の意欲作が作られていますので、もしかするとこの『アクアノートの休日』のような海底探索ゲームが出てくることも考えられます。
癒やしゲームとして非常に貴重なものなので、ぜひとも復活して欲しいゲームです。
(現存するサイト:アクアノートの休日2 )
http://www.artdink.co.jp/japanese/title/aq2/index.html
(公式サイト:AQUANAUT'S HOLIDAY ~隠された記録~)
http://www.jp.playstation.com/software/title/bcjs30023.html