パソコンやゲーム機の性能が向上し、現実と見まごうばかりの美麗なグラフィックのゲームがごく普通になってきた現在、ゲームも大きき変容し、単純な「遊び」のツールであることから、アートの「表現手法」としての要素が重視された作品も増えてきました。
「表現としてのゲーム」=アートゲームの中でも、特にアート的性質が高いとされているのが、「ウォーキングシミュレーター」と呼ばれるジャンルの作品です。
■アートゲームとは?
アートゲームというジャンルには、まだ定義と呼べるものはありません。
いわゆる「ゲーム性」よりも、「見た目」や「雰囲気」をより重視した作品をおおむねそう呼称すると考えて良いでしょう。
初期のコンピュータゲームは、そのハード的制約が強いことから、いかに簡素なグラフィックを工夫してゲーム内世界を表現するか、そのことに腐心していました。
「Wizardry」はコンピュータRPGの開祖的存在であり、プレイヤー視点で描かれるワイヤーフレームのダンジョン描写は、現在のFPSの原点と言えるかもしれません。
「Rogue」は自動生成されるダンジョンを俯瞰視点から眺めてプレイするRPGで、後の「不思議のダンジョン」シリーズのベースともなった作品ですが、当時はゲーム中に登場するキャラやアイテム、モンスター、さらに迷宮そのものに至るまでが“文字”によって描写されていました。
最新のゲームのグラフィックと並べてみると、まさに隔世の感がありますね。
ゲームが映像的表現力を獲得するにつれ、ゲームを純粋な「遊び(狭義の意味でのゲーム)」であることから、より映像を重視し、ゲーム内世界をいかに描写するかに注力する作品が登場するようになりました。
「ICO」や「ワンダと巨像」などで知られるゲームディレクター上田文人氏の作品は、その美麗なグラフィックで描写される独特の世界観が高く評価されています。
2016年12月には、開発開始から7年越しで発売された『人喰いの大鷲トリコ』が話題になりましたね。
インディーゲーム「INSIDE」は、モノクロームの重々しく硬質なグラフィックとプレイヤーを突き放すような謎に満ちた展開で多くのファンを魅了し、話題になりました。
■暗い夜道を歩き、踊る少女を描く“だけ”のゲーム『ヨルの採掘鉱』
TOKYO GAME SHOW 2016に出展され、注目を集めたインデイィーズタイトル『ヨルの採掘鉱』も、そんなアート系ゲームの流れを組むゲームのひとつです。
https://vimeo.com/199426623
プレイヤーが操作する主人公の少女ヨルにできることは、ただ歩くことと踊ることだけ。
闇に閉ざされた幻想的な世界を、少女は歩み、そして踊ります。
開発進行中のゲームで、他に何ができるかはまだわかりません。
しかし、このゲームが『INSIDE』や『人喰いの大鷲トリコ』につながるアート系ゲームの遺伝子を持っていることだけは、この短いプロモーション映像からも感じ取ることができます。
このゲームを制作している「さと」さんは、小説投稿サイト「小説家になろう」に、このゲームの原作となる小説を投稿しています。
映像を見て気になった方はご一読してみればいかがでしょうか?
ヨルの採掘鉱〜midlow jewel mine
http://ncode.syosetu.com/n7575ct/
『ヨルの採掘鉱』は2017年5月に京都で開かれるインディーズゲームの展示会Bitsummitに出店予定です。そこで、さらなる開発の進捗状況を知ることができるでしょう。