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がんで幼子を亡くした両親の心の軌跡『That Dragon, Cancer』

パソコンやゲーム機の性能が向上し、ゲームの表現が十分に進化したと言える今日、ゲーム……特に個人や少人数のスタジオで制作されるインディーズタイトルには、単なる娯楽作品とは一線を画す、より表現に近いと言える作品が数多く登場するようになりました。

2016年1月にリリースされた『That Dragon, Cancer』も、そんなタイトルのひとつです。

■海外ゲーム市場で注目されるキーワード“ナラティブ”とは?

近年、特に海外ゲームの市場を中心に使われることの多いキーワードに“ナラティブ(narrative)”というものがあります。
ナラティブとは直訳的には「物語」と翻訳される言葉ですが、いわゆる“ストーリー”とはその意味合いが大きく異なっています。

一般的に“ストーリー”と呼ばれる物語は、鑑賞者が与えられる情報(映像、音声、セリフ、設定等)を受け止めそれを理解することで成立する「受動的」な物語を意味します。
受け手は自分から何か行動したり積極的なりアクションを起こすこともなく、画面や文章で描かれるシーンやセリフを追いかけることで受動的に理解できるのが“ストーリー”、ということです。

これに対し、“ナラティブ”というのは受け手が自らの行動を通して“体験”することで自分自身の内にその体験を通して構築する、いわば能動的な物語、ということになります。

元々「ナラティブ」という言葉は精神療法の現場で用いられていた「ナラティブ・セラピー」(物語療法)という言葉を語源としています。
「ナラティブ・セラピー」では治療者(医師)がクライエント(患者)の上に立って指導するのではなく、治療者とクライエントが対等な立場を構築し、クライエントが自主性を持って自らの記憶を語ることで症状の除去から人生観の転換まで幅広い改善を目指します。
このとき、クライエントが自らの体験を再構築してつくる物語がナラティブと呼ばれます。

ゲームは映画や演劇などと違い、プレイヤーが能動的にその物語世界に干渉し、行動することを特徴としています。
ゲームの“ストーリー”がシナリオを追わせる“体験=ナラティブ”へと転じることは、ある意味では必然的展開といえるかもしれません。

日本のゲーム市場ではまだゲームにおけるナラティブが明確に認識されているとは言い難い状況にありますが、ナラティブな物語を持つゲームはすでに多くの作品として制作されていると言われています。

旧来的な意味での物語(ストーリー)と体験としての物語(ナラティブ)の違いは、日本を代表するRPGの二大タイトルである「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」の対比に見て取れるとも言います。

「ファイナルファンタジー」はシリーズを追うごとにCGやムービーのクオリテイが強化されると共に、そのシナリオや設定も複雑さを深めていると言えます。
これはより深い「物語」をプレイヤーに見せようとする意図に基づくものですが、しかし同時に、プレイヤーは自分が主人公になりきっているという経験は難しくなっているとも言えます。
その意味で、ファイナルファンタジーシリーズはまさに「ストーリー」を主軸としたゲームと言えるでしょう。

ファイナルファンタジーの「ストーリー」性と対極にあるのがドラゴンクエストです。
ドラゴンクエストではもともと主人公にセリフがないなど、物語を語る要素が希薄ですが、それだけに留まらず、物語を進行させるためのヒントもごく断片的に与えられることにより、プレイヤーが自ら行動し=経験を重ねることで物語を進行させることになります。
ドラクエにおける物語は、プレイヤーが自ら手探りで行動すること=体験することで構築されるものであり、その意味ではまさに「ナラティブ」であると言えます。

■「The Game Awards 2016」賞を受賞した『That Dragon, Cancer』とは

2016年12月2日、ロサンゼルスで開催されたゲームアワード『The Game Awards 2016』。
その場で、「Game For Impact」賞を受賞したタイトルが『That Dragon, Cancer』です。
「Game For Impact」賞は、社会的メッセージやテーマ性を強く持ち、最もプレイヤーに対しての示唆性が強いとされるタイトルに与えられる賞です。

『That Dragon, Cancer』はゲームとしてはナラティブ・アドベンチャーゲームと呼ばれるもので、2016年1月にリリースされました。


開発元であるNuminous Gamesは、プログラマのRyan Green氏とシナリオライターのAmy Green氏の夫婦からなるユニットです。
『That Dragon, Cancer』は開発者二人の間に生まれて、生後間もなくがんを患い、5歳で亡くなった息子のJoel君の生涯と、両親の葛藤を自叙伝的に追体験することを主題とするゲームです。

幼い子供の病と死、そして両親の苦悩や葛藤という重いテーマを扱いながらも、明るく暖かみを感じられるグラフィックからは、Joel君の存在が決して苦痛だけではない、かけがえのないものであったことが伝わってくるようです。

「The Game Awards 2016」のオープニング映像では、「ゲームは我々に異なる視点から人生を見つめさせてくれる」という内容のメッセージが流れたそうです。
『That Dragon, Cancer』は、自分ではない視点から他人の生と死を見つめ、自分の人生を捉え直す大きなきっかけをあたえてくれるゲームであるとも言えるでしょう。

「体験=ナラティブ」を生み出すことのできる表現様式としてのゲームは、バーチャリリアリティの技術の普及とともに、今後更に発展していくことでしょう。

『That Dragon, Cancer』はSteamからWindows/Mac/Linux版が配信されている他、iOS/Android版もリリースされています。








2017/06/28 16:00  Copyrights(C)wowneta.jp

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