2016年9月15日に発売されたアトラスの人気RPGシリーズ最新作『ペルソナ5』は、いくつものレビューサイトで2016年のゲームベストファイブ内にランキングされるなど、高い評価を受けています。
その『ペルソナ5』を創り出した株式会社アトラスが2016年12月23日に、新たなRPGの開発プロジェクトを発表し、注目を集めています。
■ロールプレイングゲーム=剣と魔法の物語、と認識された時代「
株式会社アトラスが設立されたのは1986年のこと。
ちょうどファミコン用ソフトの『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』が大ヒットし、ロールプレイングゲーム(RPG)という新たなジャンルのゲームが世間に知られるようになった時代です。
この当時、ロールプレイングゲームといえば=ヨーロッパの中世に似た世界観を背景に展開する「剣と魔法の物語」と言うイメージがありました。
RPGの源泉を辿ればトールキンの小説『指輪物語』(ロード・オブ・ザ・リング)に行き着きます。
そこから始まった「剣と魔法の物語」=ヒロイック・ファンタジーという小説ジャンルをテーブルゲームとして再現したのが、テーブルトークロールプレイングゲーム(TRPG)の『ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ(D&D)』でした。
このD&Dを筆頭とするTRPGをコンピュータゲーム化しようとして生み出されたのが、『ウィザードリィ』、そして『ウルティマ』です。
この二作品の影響を受け日本で誕生したのが、『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』、後に日本のRPG(JRPG)を代表する二大シリーズとなる作品でした。
ロールプレイングゲーム(roleplaying game)とは「役割を演じるゲーム」という意味であり、その主眼となるのはプレイヤーが物語の中で与えられた役割に沿って行動・冒険することにあります。
この条件を満たすものであれば、どのような世界観を背景にしたRPGも基本的には可能ということになります。
実際、TRPGにおいてはその黎明期から、前述のヒロイック・ファンタジーを題材にした『D&D』の他にも、57世紀という遠い未来の星間国家を舞台とするSFものである『トラベラー』や、1920年代のアメリカを舞台の基本とするホラー『クトゥルフの呼び声』といった多彩なジャンルが存在していました。
しかし、『ウルティマ』と『ウィザードリィ』をその始祖として始まったコンピュータRPG、こと、その二作の影響を受けた『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』の二大シリーズを旗手として発展した日本のコンピュータRPGは、長らく「剣と魔法の物語」
を描くタイトルの全盛期が続くことになりました。
■時代のカウンターを目指したアトラス
「剣と魔法」のRPGが全盛を誇った時代、アトラスがリリースした最初のRPGが『デジタル・デビル・物語 女神転生』でした。(ファミコン版はナムコから、PC版は日本テレネットから発売)
現代の(ゲームが発売された1980年代の)東京を舞台とし、主人公やヒロインが高校生という基本設定、当時普及が進んでいたパーソナルコンピュータをゲーム中の重要なガジェットとして使用、コンピュータプログラムによって悪魔召喚を行うという伝奇物とSFの融合したストーリーなど、当時としては画期的で斬新なゲームとしてユーザーの記憶に残る作品となりました。
なぜ、当時主流であった中世ファンタジーではなく、現代日本を舞台としたRPGを制作したのか……その問いに対し、アトラスはそれを「当たり前の世界観への対抗」=時代へのカウンターであっっと回答しています。
あえて時代の主流ではなく、常に時代に対するカウンターであること。
アトラスのその志は「真・女神転生」「ペルソナ」シリーズとして受け継がれ、RPGにおける比類なき独自性と地位を獲得するに至っています。
■「幻想世界(ファンタジー)への回帰」を謳う『Project Re FANTASY』とは?
2016年12月23日、株式会社アトラスは、新たに社内でプロダクションを行うためのスタジオとして「スタジオ・ゼロ」を設立、『PROJECT Re FANTASY』と仮称される新規タトルのRPGの制作を行うことを発表しました。
『PROJECT Re FANTASY』のプロデューサ兼ディレクターに就任するのは『ペルソナ』シリーズ等を手がけた橋野桂氏が就任、また、キャラクターデザインに同じく『ペルソナ』の副島成記氏、サウンドコンポーザに目黒将司氏が加わることが発表されています。
『PROJECT Re FANTASY』の制作発表にあたり、橋野氏は「真なる幻想世界(=ファンタジー)への回帰」というテーマを掲げています。
現代や未来世界を舞台にしたRPGも増えてきてはいるものの、いまだコンピュータRPGの主流は中世ファンタジーにあると言えるでしょう。
そのような状況にあって、アトラスは「時代へのカウンター」を常に標榜してきた自分たちことが可能とする「真なる幻想世界への回帰」を新たなテーマとして掲げたということです。
まさに「原点=零(ゼロ)」に立ち返るプロジェクトのために設立されたのが「スタジオ・ゼロ」ということなのでしょう。
スタジオ・ゼロの公式サイトで『PROJECT Re FANTASY』のイメージアートが公開されており、それらは当作のエッセンスとして挙げられる「真なる旅」と共に、果てしない旅をイメージさせるものになっています。
果たして、『ペルソナ』のメインスタッフが見せてくれる「真なる旅」とは、どのようなものになるのでしょうか? いまからとても楽しみですね。
【PROJECT Re FANTASY】スタジオ・ゼロ 公式サイト
http://rpg.jp/